圏論・層論およびGrothendieck位相における超限帰納法と超限構成の理論と応用

目次

1. 序論:圏論における超限帰納法と超限構成の意義

現代の抽象代数学、ホモロジー代数学、代数的位相幾何学、代数幾何学、およびトポス理論において、無限のサイズをもつ構造や極限・余極限操作を統制するツールとして超限帰納法 (transfinite induction) および 超限構成 (transfinite construction) は極めて中心的かつ不可欠な役割を果たしている。

有限のステップ(代数的な閉包や生成過程など)で構造が閉じない場合、順序数 $\alpha$ に沿って帰納的に構成を無限回繰り返すことで目的の性質を満たす対象や射を統一的に構成することができる。例えば、代数的閉体の構成や自由代数の構成といった古典的な集合論的構成は、圏論の視点においては「超限押し出し列 (transfinite pushout sequence)」や「有向余極限 (directed colimit)」の構成として抽象化・一般化される。

本論文形式の解説では、現代圏論・層論・トポス理論・凝縮数学における超限帰納法および超限構成の主要な応用事例である以下の7つの大定理・構成理論を網羅し、その定義、構造的証明、具体的な応用例、証明のギャップを埋めた完全な論証を提供する。

2. Grothendieck 圏における十分に単射的な対象の存在

定義 2.1(アーベル圏)

圏 $\mathcal{A}$ がアーベル圏 (abelian category) であるとは、以下の条件をすべて満たすことをいう。

  1. $\mathcal{A}$ は前加法圏(すべての Hom 集合がアーベル群の構造をもち、合成が双線形)であり、有限直積(零対象 $0$ および二項直積 $A \oplus B$)が存在する(すなわち加法圏である)。
  2. すべての射 $f : A \to B$ は核 $\mathrm{Ker}(f) \to A$ および余核 $B \to \mathrm{Coker}(f)$ をもつ。
  3. すべてのモノ射(monomorphism)は核であり、すべてのエピ射(epimorphism)は余核である。
  4. すべての射 $f : A \to B$ に対して、標準的射 $\bar{f} : \mathrm{Coim}(f) \to \mathrm{Im}(f)$ は同型射である。ここで $\mathrm{Coim}(f) = \mathrm{Coker}(\mathrm{Ker}(f) \to A)$、$\mathrm{Im}(f) = \mathrm{Ker}(B \to \mathrm{Coker}(f))$ である。
定義 2.2(有向余極限と AB5 条件)

アーベル圏 $\mathcal{A}$ において、有向集合 $I$(任意の $i, j \in I$ に対し $i \le k, j \le k$ となる $k \in I$ が存在する半順序集合)から $\mathcal{A}$ への図式 $(A_i)_{i \in I}$ の余極限を有向余極限 (directed colimit) と呼ぶ。

アーベル圏 $\mathcal{A}$ が AB5 条件 を満たすとは、任意の小直和(arbitrary small coproducts)が存在し、かつ任意の有向図式の短完全列の族

$$ 0 \to A_i \xrightarrow{\ f_i\ } B_i \xrightarrow{\ g_i\ } C_i \to 0 \quad (i \in I) $$

に対して、余極限を取る操作が完全列を保存すること、すなわち

$$ 0 \to \varinjlim_{i \in I} A_i \xrightarrow{\ \varinjlim f_i\ } \varinjlim_{i \in I} B_i \xrightarrow{\ \varinjlim g_i\ } \varinjlim_{i \in I} C_i \to 0 $$

が再び $\mathcal{A}$ における短完全列となることをいう。

定義 2.3(生成子と Grothendieck 圏)

アーベル圏 $\mathcal{A}$ の対象 $G$ が生成子 (generator) であるとは、関手 $\mathrm{Hom}_{\mathcal{A}}(G, -) : \mathcal{A} \to \mathrm{Set}$ が忠実であることをいう。これは、任意の相異なる平行射 $f, g : A \to B$ ($f \neq g$)に対して、ある射 $h : G \to A$ が存在して $f \circ h \neq g \circ h$ となることと同値である。

AB5 条件を満たし、かつ生成子 $G$ をもつアーベル圏を Grothendieck 圏 (Grothendieck category) と呼ぶ。

定義 2.4(部分対象と部分対象の集合)

対象 $A \in \mathcal{A}$ の部分対象 (subobject) とは、$A$ へのモノ射 $m : U \hookrightarrow A$ の同値類のことである($m_1 : U_1 \hookrightarrow A$ と $m_2 : U_2 \hookrightarrow A$ が同値とは、同型 $i : U_1 \cong U_2$ が存在して $m_2 \circ i = m_1$ となること)。$A$ の部分対象全体の集合(の同値類)を $\mathcal{S}(A)$ で表す。Grothendieck 圏においては、任意の対象 $A$ に対して $\mathcal{S}(A)$ は小集合(small set)となる。

定義 2.5(単射的対象と十分に単射的な対象を持つ圏)

アーベル圏 $\mathcal{A}$ の対象 $I$ が単射的対象 (injective object) であるとは、共変関手 $\mathrm{Hom}_{\mathcal{A}}(-, I) : \mathcal{A}^{\mathrm{op}} \to \mathrm{Ab}$ が完全関手であることをいう。同値な条件として、任意のモノ射 $i : A \hookrightarrow B$ と任意の射 $f : A \to I$ に対して、ある射 $\tilde{f} : B \to I$ が存在して $\tilde{f} \circ i = f$ を満たすことが挙げられる。

アーベル圏 $\mathcal{A}$ が十分に単射的な対象を持つ (has enough injectives) とは、任意の対象 $M \in \mathcal{A}$ に対して、ある単射的対象 $I$ へのモノ射 $j : M \hookrightarrow I$ が存在することをいう。

補題 2.6(Grothendieck 圏における Baer の判定法)

$G$ を生成子とする Grothendieck 圏 $\mathcal{A}$ の対象 $E$ について、以下は同値である。

  1. $E$ は単射的対象である。
  2. $G$ の任意の部分対象 $U \hookrightarrow G$ と任意の射 $f : U \to E$ に対して、ある射 $\tilde{f} : G \to E$ が存在して $\tilde{f}$ の $U$ への制限が $f$ に一致する。
補題 2.6 の証明

(1 $\implies$ 2) は単射的対象の定義から明らかである。

(2 $\implies$ 1) を示す。任意のモノ射 $i : A \hookrightarrow B$ と射 $f : A \to E$ が与えられたとする。対 $(A', f')$ の集合 $\mathcal{P}$ を、$A \subset A' \subset B$ なる部分対象 $A'$ と $f$ の延長 $f' : A' \to E$ の組全体とする。$\mathcal{P}$ に包含関係による半順序を定めると、Zornの補題により極大元 $(M, g)$ が存在する。

$M = B$ であることを背理法で示す。仮に $M \subsetneq B$ とすると、$M$ に含まれない $B$ の要素に対応して、ある射 $h : G \to B$ であってその像が $M$ に含まれないものが存在する($G$ が生成子であるため)。

引き戻し(pullback)図式を構成する:

$$ \begin{array}{ccc} U & \hookrightarrow & G \\ \downarrow & & \downarrow{\scriptstyle h} \\ M & \hookrightarrow & B \end{array} $$

ここで $U = h^{-1}(M) \hookrightarrow G$ は $G$ の部分対象である。引き戻しの性質により、合成 $U \to M \xrightarrow{g} E$ が定義される。仮定 (2) より、この射は $\tilde{g} : G \to E$ に延長される。

押し出し(pushout)図式を用いて $M' = M + h(G) \subset B$ 上の射 $g' : M' \to E$ を定義すると、これは $g$ の厳密な延長となり $(M, g)$ の極大性に矛盾する。したがって $M = B$ であり、$E$ は単射的である。

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定理 2.7(Grothendieck 圏の十分に単射的な対象の存在定理)

任意の Grothendieck 圏 $\mathcal{A}$ は十分に単射的な対象を持つ。

定理 2.7 の構造的・詳細な証明(超限押し出し列による構成)

ステップ 1:正則基数の選定
$\mathcal{A}$ の生成子を $G$ とする。$G$ の部分対象全体の集合 $\mathcal{S}(G)$ の濃度を $|\mathcal{S}(G)|$ とする。基数 $|\mathcal{S}(G)|$ よりも厳密に大きい正則共終数(regular cofinality)をもつ正則無限基数 $\kappa$ を一つ固定する(例えば $\kappa = |\mathcal{S}(G)|^+$)。

ステップ 2:超限押し出し列 $(M_\alpha)_{\alpha \le \kappa}$ の超限帰納的構成
与えられた任意の対象 $M \in \mathcal{A}$ に対して、順序数 $\alpha \le \kappa$ に関する超限帰納法により対象の超限列 $(M_\alpha)_{\alpha \le \kappa}$ およびモノ射の族 $(j_{\alpha, \beta} : M_\alpha \hookrightarrow M_\beta)_{\alpha \le \beta}$ を構成する。

  • 基底段階 ($\alpha = 0$): $$ M_0 = M $$ とする。
  • 後続順序数段階 ($\alpha \to \alpha + 1$): $M_\alpha$ が構成されているとする。集合 $S_\alpha$ を、$G$ の部分対象 $U \hookrightarrow G$ と射 $f : U \to M_\alpha$ の組 $s = (U, f)$ 全体の集合とする: $$ S_\alpha = \{ (U, f) \mid U \in \mathcal{S}(G), \, f \in \mathrm{Hom}_{\mathcal{A}}(U, M_\alpha) \} $$ 直和対象 $\bigoplus_{s \in S_\alpha} U$ および $\bigoplus_{s \in S_\alpha} G$ を考え、包含射の直和 $\bigoplus_{s} i_s : \bigoplus_{s} U \hookrightarrow \bigoplus_{s} G$ と、射の和 $\sum_s f_s : \bigoplus_{s} U \to M_\alpha$ による押し出し(pushout)図式を形成する: $$ \begin{array}{ccc} \bigoplus_{s \in S_\alpha} U & \xrightarrow{\ \bigoplus i_s\ } & \bigoplus_{s \in S_\alpha} G \\ \downarrow{\scriptstyle \sum f_s} & & \downarrow \\ M_\alpha & \xrightarrow{\ j_{\alpha, \alpha+1}\ } & M_{\alpha+1} \end{array} $$ アーベル圏において、モノ射の直和はモノ射であり(AB5条件による)、モノ射の押し出しによる引き戻し・押し出し像も再びモノ射となる。したがって、構造射 $j_{\alpha, \alpha+1} : M_\alpha \hookrightarrow M_{\alpha+1}$ はモノ射である。
  • 極限順序数段階 ($\gamma \le \kappa$ が極限順序数の場合): $\gamma$ 未満のすべての $\alpha < \gamma$ に対する有向余極限として $M_\gamma$ を定義する: $$ M_\gamma = \varinjlim_{\alpha < \gamma} M_\alpha $$ AB5 条件により、有向余極限は完全であるため、各標準射 $j_{\alpha, \gamma} : M_\alpha \to M_\gamma$ もすべてモノ射である。

ステップ 3:極限対象 $M_\kappa$ の単射性の検証
構成された超限列の極端元 $M_\kappa = \varinjlim_{\alpha < \kappa} M_\alpha$ が Baer の判定法(補題 2.6)を満たすことを示す。

$G$ の任意の部分対象 $U \hookrightarrow G$ および任意の射 $g : U \to M_\kappa$ をとる。 $G$(したがってその部分対象 $U$)は小生成子に起因して $\kappa$-小対象的性質をもつ。具体的には、$\kappa > |\mathcal{S}(G)|$ かつ $\kappa$ が正則基数であることから、任意の射 $g : U \to M_\kappa = \varinjlim_{\alpha < \kappa} M_\alpha$ の像は、ある $\alpha_0 < \kappa$ における $M_{\alpha_0}$ へ分解(factor)する。すなわち、ある射 $g_0 : U \to M_{\alpha_0}$ が存在して $$ g = j_{\alpha_0, \kappa} \circ g_0 $$ と表される。

この組 $s = (U, g_0)$ は後続段階 $\alpha_0 + 1$ の構成における集合 $S_{\alpha_0}$ の元である。押し出し図式の可換性より、射 $g_0 : U \to M_{\alpha_0}$ は $M_{\alpha_0+1}$ への合成射において $G$ からの射 $h : G \to M_{\alpha_0+1}$ へと延長される: $$ h \circ i_U = j_{\alpha_0, \alpha_0+1} \circ g_0 $$ この射 $h$ とモノ射 $j_{\alpha_0+1, \kappa} : M_{\alpha_0+1} \hookrightarrow M_\kappa$ を合成して得られる射 $$ \tilde{g} = j_{\alpha_0+1, \kappa} \circ h : G \to M_\kappa $$ を考えると、 $$ \tilde{g} \circ i_U = j_{\alpha_0+1, \kappa} \circ h \circ i_U = j_{\alpha_0+1, \kappa} \circ j_{\alpha_0, \alpha_0+1} \circ g_0 = j_{\alpha_0, \kappa} \circ g_0 = g $$ となり、$\tilde{g}$ は $g$ の $G$ 全体への延長である。

補題 2.6(Baer の判定法)により、$M_\kappa$ は単射的対象である。また基底射 $M = M_0 \hookrightarrow M_\kappa$ はモノ射の合成(および有向余極限)としてモノ射である。したがって $\mathcal{A}$ は十分に単射的な対象を持つ。

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例 2.8(加群の圏 $\mathrm{Mod}_R$)

環 $R$ 上の左加群の圏 $\mathcal{A} = \mathrm{Mod}_R$ は、生成子 $G = R$ をもち、任意の小直和と有向余極限の完全性(AB5)を満たす Grothendieck 圏である。 $R$ の部分対象とは左イデアル $I \subset R$ のことに他ならない。古典的な「加群の単射的包絡(injective hull)」の構成は、まさに超限帰納法を用いて行われる。任意の $R$-加群 $M$ に対し、一回の押し出し操作では単射性を確保する(すべての左イデアルからの射を延長可能にする)ことはできない。そこで、順序数 $\alpha$ に沿って、部分イデアルからの射を添加する操作を超限帰納的に反復する。極限順序数においては有向余極限をとり、ある十分大きな正則基数 $\kappa$ に到達した時点で、新たな延長を必要としない単射的加群 $E(M)$ が得られる。このように、超限帰納法は代数系の埋め込み定理を厳密に正当化する手段となっている。

例 2.9(位相空間上のアーベル群の層の圏 $\mathrm{Sh}(X, \mathrm{Ab})$)

位相空間 $X$ 上のアーベル群の層の圏 $\mathrm{Sh}(X, \mathrm{Ab})$ は Grothendieck 圏である。生成子として、開集合 $U \subset X$ ごとの切断の延長層の直和 $$ G = \bigoplus_{U \subset X \text{ open}} j_{U!}(\mathbb{Z}_U) $$ をとることができる。この圏において単射的分解(injective resolution)を構成する際にも、超限帰納法が不可欠である。局所的な切断の持ち上げの障害となるコホモロジー類を完全に消滅させるために、単一のステップで修正を行うことは不可能である。そのため、超限帰納法を用いて、後続順序数ステップですべての開被覆に対して切断を強制的に添加する押し出し層を構成し、極限順序数ステップで有向余極限をとる。この超限構成プロセスを反復し続けることで初めて層の単射的分解が完成し、結果として Grothendieck 複体コホモロジー理論 $H^n(X, \mathcal{F}) = R^n\Gamma(X, \mathcal{F})$ が一般の位相空間上で矛盾なく定義されるのである。

3. Quillen の小対象論法 (Small Object Argument)

定義 3.1($\lambda$-系列および超限合成)

順序数 $\lambda$ に対し、圏 $\mathcal{C}$ における $\lambda$-系列 ($\lambda$-sequence) とは、$\lambda$ から $\mathcal{C}$ への共変関手 $X : \lambda \to \mathcal{C}$ であって、任意の極限順序数 $\gamma < \lambda$ に対して $$ X_\gamma = \varinjlim_{\beta < \gamma} X_\beta $$ を満足するものをいう。合成射 $X_0 \to \varinjlim_{\alpha < \lambda} X_\alpha$ を 超限合成 (transfinite composition) と呼ぶ。

定義 3.2($\kappa$-小対象)

正則基数 $\kappa$ に対し、対象 $K \in \mathcal{C}$ が $\kappa$-小対象 ($\kappa$-small object) であるとは、任意の $\kappa$-系列 $X$ に対して、自然な双射 $$ \varinjlim_{\alpha < \kappa} \mathrm{Hom}_{\mathcal{C}}(K, X_\alpha) \xrightarrow{\ \cong\ } \mathrm{Hom}_{\mathcal{C}}\left( K, \varinjlim_{\alpha < \kappa} X_\alpha \right) $$ が存在することである。

定義 3.3(右リフティング性と直交性)

圏 $\mathcal{C}$ の射 $i : A \to B$ および $p : X \to Y$ に対し、$p$ が $i$ に対して 右リフティング性 (right lifting property) を持ち、$i \perp p$ と表記するとは、任意の可換正方形

$$ \begin{array}{ccc} A & \longrightarrow & X \\ \downarrow{\scriptstyle i} & & \downarrow{\scriptstyle p} \\ B & \longrightarrow & Y \end{array} $$

に対して、可換性を保つ対角射 $h : B \to X$(すなわち $h \circ i = u$ かつ $p \circ h = v$)が存在することである。射の集合 $I$ に対し、 $$ I^\perp = \{ p \in \mathrm{Mor}(\mathcal{C}) \mid \forall i \in I, \, i \perp p \} $$ と定める。

定理 3.4(Quillen の小対象論法)

$\mathcal{C}$ を小余極限を持つ圏とし、$I$ を $\mathcal{C}$ の射の集合とする。$I$ のすべての射の始域(domain)が $\kappa$-小対象であるとする。このとき、$\mathcal{C}$ の任意の射 $f : X \to Y$ は $$ f = q \circ p $$ と因数分解できる。ここで、$p : X \to Z$ は $I$ の射の押し出しの超限合成であり、$q : Z \to Y$ は $q \in I^\perp$ を満たす。

定理 3.4 の完全な証明

超限順序数 $\alpha \le \kappa$ について対象 $Z_\alpha$ と射 $p_{\alpha, \beta} : Z_\alpha \to Z_\beta$ ($\alpha \le \beta$) および $q_\alpha : Z_\alpha \to Y$ を超限帰納法により構成する。

  • 初期段階 ($\alpha = 0$): $Z_0 = X$ とおき、$q_0 = f$ とする。
  • 後続段階 ($\alpha \to \alpha + 1$): $Z_\alpha$ および $q_\alpha : Z_\alpha \to Y$ が構成されているとする。集合 $S_\alpha$ を、射 $i : A \to B \in I$ および可換正方形をなす対 $(u, v)$(ただし $u : A \to Z_\alpha$, $v : B \to Y$ であり $q_\alpha \circ u = v \circ i$)全体の集合とする。 $Z_{\alpha+1}$ を以下の押し出しにより定義する: $$ \begin{array}{ccc} \bigoplus_{(i, u, v) \in S_\alpha} A & \xrightarrow{\ \bigoplus i\ } & \bigoplus_{(i, u, v) \in S_\alpha} B \\ \downarrow{\scriptstyle \bigoplus u} & & \downarrow \\ Z_\alpha & \xrightarrow{\ p_{\alpha, \alpha+1}\ } & Z_{\alpha+1} \end{array} $$ 押し出しの普遍性により、射 $q_{\alpha+1} : Z_{\alpha+1} \to Y$ であって $q_{\alpha+1} \circ p_{\alpha, \alpha+1} = q_\alpha$ かつ各 $(i, u, v) \in S_\alpha$ に対して右側の因子からの像が $v$ と一致するものが一意に存在する。
  • 極限段階 ($\gamma \le \kappa$ が極限順序数の場合): $Z_\gamma = \varinjlim_{\alpha < \gamma} Z_\alpha$ と定め、$q_\gamma : Z_\gamma \to Y$ を余極限の普遍性から誘導する。

$Z = Z_\kappa$ とおき、$p = p_{0, \kappa} : X \to Z$, $q = q_\kappa : Z \to Y$ と定める。構築により $f = q \circ p$ であり、$p$ は $I$ の射の押し出しの超限合成である。

$q \in I^\perp$ であることを示す。任意の $i : A \to B \in I$ と可換正方形

$$ \begin{array}{ccc} A & \xrightarrow{\ u\ } & Z_\kappa \\ \downarrow{\scriptstyle i} & & \downarrow{\scriptstyle q} \\ B & \xrightarrow{\ v\ } & Y \end{array} $$

を考える。仮定より $A$ は $\kappa$-小対象であるから、射 $u : A \to Z_\kappa = \varinjlim_{\alpha < \kappa} Z_\alpha$ はある $\alpha < \kappa$ に対する射 $u_\alpha : A \to Z_\alpha$ を経由する。 正方形の可換性より、$q_\alpha \circ u_\alpha = v \circ i$ とみなしてよい。 すると、三つ組 $(i, u_\alpha, v)$ は $S_\alpha$ の元となる。 $Z_{\alpha+1}$ の押し出しの構成により、射 $h_{\alpha+1} : B \to Z_{\alpha+1}$ が存在して、$h_{\alpha+1} \circ i = p_{\alpha, \alpha+1} \circ u_\alpha$ かつ $q_{\alpha+1} \circ h_{\alpha+1} = v$ を満たす。 この $h_{\alpha+1}$ と標準的射 $p_{\alpha+1, \kappa} : Z_{\alpha+1} \to Z_\kappa$ を合成して得られる射 $h = p_{\alpha+1, \kappa} \circ h_{\alpha+1} : B \to Z_\kappa$ をとると、 $$ h \circ i = u \quad \text{かつ} \quad q \circ h = v $$ が成り立つ。したがって $q \in I^\perp$ が証明された。

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例 3.5(位相空間の圏 $\mathrm{Top}$ における CW 錯体の構成)

位相空間の圏 $\mathrm{Top}$ において、ホモトピー同値性を制御するために、球面から境界ディスクへの包含射の族 $I = \{ S^{n-1} \hookrightarrow D^n \mid n \ge 0 \}$ をとる。$S^{n-1}$ はコンパクト空間(すなわち位相空間の圏における $\aleph_0$-小対象)であるため、小対象論法を適用できる。空空間 $\varnothing$ から任意の位相空間 $X$ への射 $\varnothing \to X$ を分解することを考える。このとき、超限帰納法を用いることで、初めに $S^{-1}$ から $D^0$(点)を無数に添加し($\alpha=1$)、次に $S^0$(境界)に沿って $D^1$(線分)を添加する($\alpha=2$)、といったセル接着プロセスを順序数に沿って実行する。これをすべての超限順序数にわたって極限をとりながら反復適用することで、任意の位相空間 $X$ に対する CW 錯体近似 $Z \to X$ (Serre ファイブレーションかつ弱ホモトピー同値)が超限帰納的な押し出しの極限として厳密に構成されるのである。

4. Grothendieck 位相における超限プラス構成による層化

定義 4.1(サイトと Grothendieck 位相)

小圏 $\mathcal{C}$ の対象 $X$ 上のふるい (sieve) とは、関手 $y(X) = \mathrm{Hom}_{\mathcal{C}}(-, X)$ の部分関手 $S \subset y(X)$ のことである。 $\mathcal{C}$ 上の Grothendieck 位相 (Grothendieck topology) $J$ とは、各対象 $X \in \mathcal{C}$ に $X$ 上のふるいの集合 $J(X)$ を割り当てる規則であって、以下の公理を満たすものをいう:

  1. 最大ふるい $y(X) \in J(X)$。
  2. (安定性)$S \in J(X)$ および射 $f : Y \to X$ に対し、引き戻しふるい $f^*S \in J(Y)$。
  3. (透過性)$S \in J(X)$ であり、$R$ が $X$ 上のふるいであって、任意の $Y \to X \in S$ に対し $f^*R \in J(Y)$ ならば、$R \in J(X)$。

組 $(\mathcal{C}, J)$ をサイト (site) と呼ぶ。

定義 4.2(層とプラス構成)

前層 $F : \mathcal{C}^{\mathrm{op}} \to \mathrm{Set}$ が 層 (sheaf) であるとは、任意の $X \in \mathcal{C}$ および任意の $S \in J(X)$ に対し、自然な射 $$ \mathrm{Hom}_{\mathrm{PSh}(\mathcal{C})}(y(X), F) \longrightarrow \mathrm{Hom}_{\mathrm{PSh}(\mathcal{C})}(S, F) $$ が全単射となることである。前層 $F$ に対し、そのプラス構成 (plus construction) $F^+$ を $$ F^+(X) = \varinjlim_{S \in J(X)} \mathrm{Hom}_{\mathrm{PSh}(\mathcal{C})}(S, F) $$ により定義する。

定理 4.3(超限プラス構成による層化定理)

任意の Grothendieck サイト $(\mathcal{C}, J)$ に対し、十分大きな正則基数 $\kappa$ が存在する。前層 $F$ に対し、超限帰納法により

  • $F^{(0)} = F$
  • $F^{(\alpha+1)} = (F^{(\alpha)})^+$
  • 極限順序数 $\gamma$ に対して $F^{(\gamma)} = \varinjlim_{\alpha < \gamma} F^{(\alpha)}$

と定義すると、$F^{(\kappa)}$ は層であり、前層の圏 $\mathrm{PSh}(\mathcal{C})$ から層の圏 $\mathrm{Sh}(\mathcal{C}, J)$ への左随伴関手 (層化関手; sheafification functor) $\mathbf{a}F = F^{(\kappa)}$ を与える。

定理 4.3 の証明

各対象 $X \in \mathcal{C}$ に対する被覆ふるい $S \in J(X)$ の全体の集合を $J_{\mathrm{all}} = \bigcup_{X \in \mathcal{C}} J(X)$ とする。$\kappa$ を $J_{\mathrm{all}}$ の任意の元の要素数および $J(X)$ の濃度より真に大きい正則基数とする。

超限列 $(F^{(\alpha)})_{\alpha \le \kappa}$ は正準射 $\eta_{F^{(\alpha)}} : F^{(\alpha)} \to F^{(\alpha+1)}$ による余極限系をなす。 $\kappa$ が十分大きいことから、任意の $X \in \mathcal{C}$ および任意の $S \in J(X)$ について、関手 $\mathrm{Hom}_{\mathrm{PSh}(\mathcal{C})}(S, -)$ は $\kappa$-有向余極限と可換になる。すなわち、 $$ \mathrm{Hom}_{\mathrm{PSh}(\mathcal{C})}\left( S, \varinjlim_{\alpha < \kappa} F^{(\alpha)} \right) \cong \varinjlim_{\alpha < \kappa} \mathrm{Hom}_{\mathrm{PSh}(\mathcal{C})}(S, F^{(\alpha)}) $$ が成立する。したがって、

$$ \mathrm{Hom}_{\mathrm{PSh}(\mathcal{C})}(S, F^{(\kappa)}) \cong \varinjlim_{\alpha < \kappa} \mathrm{Hom}_{\mathrm{PSh}(\mathcal{C})}(S, F^{(\alpha)}) $$ $$ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \cong \varinjlim_{\alpha < \kappa} (F^{(\alpha)})^+(X) $$ $$ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \ \cong \varinjlim_{\alpha < \kappa} F^{(\alpha+1)}(X) \cong F^{(\kappa)}(X) \cong \mathrm{Hom}_{\mathrm{PSh}(\mathcal{C})}(y(X), F^{(\kappa)}) $$

が成り立つ。これは $F^{(\kappa)}$ が $J$ に関する層の定義条件を満たすことを意味する。 また、各段階での射 $F \to F^{(\kappa)}$ が普遍性を満たすことは、層 $G$ に対する $\mathrm{Hom}_{\mathrm{PSh}(\mathcal{C})}(F^{(\alpha)}, G) \cong \mathrm{Hom}_{\mathrm{PSh}(\mathcal{C})}(F, G)$ を超限帰納法で示すことにより従う。

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例 4.4(1回のプラス構成で層にならない反例と濃密位相)

位相空間上の開集合格子サイトなどの有限型サイトでは $F^{++}$(2回のプラス構成)で層が得られることが古典的に知られている。しかし、無制限な無限被覆を許す一般の Grothendieck 位相や、特に濃密位相 (dense topology) においては、分離的(separated)前層であっても 1 回または 2 回のプラス構成では決して層にならない。ある前層に 1 回のプラス構成を行っても、新たな被覆条件の非互換性が再帰的に生じ続けるためである。この問題を解決するためには、超限帰納法を用いてプラス構成を順序数に沿って適用し続ける必要がある。後続順序数でプラス構成を行い、極限順序数で有向余極限をとるという超限反復構成を、サイトのサイズを上回る超限順序数 $\omega_1$(またはより大きな正則基数)まで継続することによって、初めてすべての被覆条件が整合する完全な層化関手を得ることができるのである。

5. 特殊随伴関手定理 (Special Adjoint Functor Theorem)

定義 5.1(余生成子集合と余well-powered性)

圏 $\mathcal{C}$ の対象の小集合 $K \subset \mathrm{Ob}(\mathcal{C})$ が 余生成子集合 (cogenerating set) であるとは、任意の相異なる平行射 $f, g : A \to B$ ($A, B \in \mathcal{C}$)に対して、ある $K_0 \in K$ および射 $h : B \to K_0$ が存在して、$h \circ f \neq h \circ g$ となることである。

圏 $\mathcal{C}$ が 余well-powered (co-well-powered) であるとは、任意の対象 $A \in \mathcal{C}$ に対して、$A$ の商対象(商対象の同値類)全体の集合 $\mathrm{Sub}_{\mathrm{quot}}(A)$ が小集合となることである。

定理 5.2(特殊随伴関手定理; SAFT)

$\mathcal{C}$ を小完備かつ余well-poweredな圏とし、$K \subset \mathrm{Ob}(\mathcal{C})$ を小余生成子集合とする。関手 $G : \mathcal{C} \to \mathcal{D}$ が小極限を保存するならば、$G$ は左随伴関手 $F : \mathcal{D} \to \mathcal{C}$ を持つ。

定理 5.2 の証明

Freyd の随伴関手定理により、小極限を保存する関手 $G : \mathcal{C} \to \mathcal{D}$ が左随伴を持つためには、任意の $D \in \mathcal{D}$ に対して解集合条件 (solution set condition) が満たされることを示せば十分である。

$D \in \mathcal{D}$ を固定する。各 $K_0 \in K$ に対し、$\mathrm{Hom}_{\mathcal{D}}(D, G(K_0))$ は小集合である。積対象 $$ P = \prod_{K_0 \in K} \prod_{\sigma \in \mathrm{Hom}_{\mathcal{D}}(D, G(K_0))} K_0 $$ を考える。$K$ は小集合であり、各 $\mathrm{Hom}_{\mathcal{D}}(D, G(K_0))$ も小集合であるため、この積は小積であり、$\mathcal{C}$ の小完備性から $P \in \mathcal{C}$ が存在する。 $\mathcal{C}$ は余well-poweredであるため、$P$ の商対象全体の代表系を $S_D = \mathcal{Q}(P)$ とおくと、$S_D$ は小集合である。

$S_D$ が解集合条件を満たすことを示す。任意の $C \in \mathcal{C}$ および射 $f : D \to G(C)$ をとる。 各 $K_0 \in K$ と $h \in \mathrm{Hom}_{\mathcal{C}}(C, K_0)$ に対し、$G(h) \circ f \in \mathrm{Hom}_{\mathcal{D}}(D, G(K_0))$ である。 積の普遍性により、射 $e : C \to P$ であって、$(K_0, G(h) \circ f)$ 成分への射影 $\pi_{K_0, G(h) \circ f} : P \to K_0$ との合成が $\pi_{K_0, G(h) \circ f} \circ e = h$ となるものが一意に存在する。

$\mathcal{C}$ は小完備かつ余well-poweredであるため、任意の射はエピ射とモノ射の合成に分解できる。$e$ のエピ・モノ分解を $$ C \xrightarrow{\ p\ } Q \xrightarrow{\ m\ } P $$ ($p$ はエピ射、$m$ はモノ射)とする。$Q$ は $P$ の商対象であるから、$Q \in S_D$ である。

普遍射 $d : D \to G(P)$ を、各成分 $(K_0, \sigma)$ への射影の $G$ による像 $G(\pi_{K_0, \sigma}) : G(P) \to G(K_0)$ との合成が $\sigma : D \to G(K_0)$ に一致する唯一の射として定める。 $K$ が余生成子集合であることと $G$ が等化子および小積を保存することから、$f : D \to G(C)$ は $G(p) : G(C) \to G(Q)$ を経由して $Q \in S_D$ への射に分解する。 したがって、小集合 $S_D$ は解集合条件を満たし、$G$ は左随伴関手 $F$ を持つ。

$\blacksquare$
5.3 特殊随伴関手定理の証明と超限帰納法の深い関係性

上記で提示した Freyd による特殊随伴関手定理(SAFT)の標準的な証明は、小積と商対象の極大束を用いて解集合条件の存在を抽象的に示す「非構成的」なアプローチを採用している。しかし、実際の応用において、この抽象的な定理が保証する「左随伴関手 $F(D)$」を実際に構成するプロセスは、本質的に超限帰納法 (transfinite induction) と深く結びついている。

具体的に言えば、随伴関手の構成は代数系における「自由生成」や「関係式による商」の構成と同義である。対象 $D \in \mathcal{D}$ から $F(D) \in \mathcal{C}$ を構築する場合、代数的な操作(演算を施す操作)と関係式を同一視する操作を無限に繰り返さなければならない。通常の有限代数系であればこの構成は可算無限回($\omega$ ステップ)の帰納法で終了する。しかし、一般の圏においては極限操作などが関与するため、$\omega$ 回では構成が閉じない。そこで、超限帰納法に基づく G. M. Kelly の超限構成的アプローチが必要となる。

超限帰納法を用いた構成的アプローチでは、以下のように左随伴関手を段階的に構築する:

  • $\alpha = 0$: 生成子となる初期対象 $X_0$ を設定する。
  • 後続順序数 $\alpha+1$: 前段階 $X_\alpha$ において未処理の「関係式」や「生成元の演算」を解消するため、余等化子(coequalizer)や押し出し(pushout)などの余極限操作を用いて新しい対象 $X_{\alpha+1}$ を構築し、構造を拡大・制約する。
  • 極限順序数 $\gamma$: それまでの構成の有向余極限 $X_\gamma = \varinjlim_{\alpha < \gamma} X_\alpha$ を計算する。

SAFTにおいて要求される「$\mathcal{C}$ が余well-poweredである」という条件は、まさにこの「超限帰納法による関係式の添加と商対象の生成プロセスが、ある十分大きな正則基数 $\kappa$ に到達した段階で必ず停止(収束)する」ことを保証するためのサイズ制約条件に他ならない。すなわち、非構成的に見えるSAFTの商対象の束の議論は、動的な視点からは「超限帰納法による対象の漸近的構成」と同値であり、超限構成定理の存在証明を静的な集合論的枠組みに翻訳したものと解釈することができるのである。

例 5.4(コンパクト Hausdorff 空間の圏 $\mathrm{CHaus}$ と Stone-Čech 完備化)

コンパクト Hausdorff 空間の圏 $\mathrm{CHaus}$ は小完備かつ余well-poweredであり、単位区間 $I = [0, 1]$ が単一の単射的余生成子(injective cogenerator)となる。忘却関手 $U : \mathrm{CHaus} \to \mathrm{Set}$ に特殊随伴関手定理を適用することにより、左随伴関手である Stone-Čech 完備化関手 $\beta : \mathrm{Set} \to \mathrm{CHaus}$ の存在がただちに導かれる。 この Stone-Čech 完備化も、構成的な観点からは超限帰納法を用いて理解することができる。離散位相空間から出発し、収束しない極限点(超フィルターなど)を空間に強制的に添加するという構成を考えると、一度極限点を追加した空間にさらに新しい極限点が生じる可能性がある。そのため、超限帰納法を用いて、後続ステップで極限点を追加し、極限順序数ステップで余極限をとるプロセスをすべての超限順序数にわたって反復し続ける。この超限構成プロセスが最終的に飽和し、すべての極限が完備化されたとき、それがまさに SAFT によって抽象的に保証された Stone-Čech 完備化空間 $\beta X$ と一致するのである。

6. 局所可提示圏における局所化と反射の部分圏

定義 6.1($\lambda$-可提示対象と局所可提示圏)

正則基数 $\lambda$ に対し、圏 $\mathcal{C}$ の対象 $X$ が $\lambda$-可提示 ($\lambda$-presentable) であるとは、共変関手 $\mathrm{Hom}_{\mathcal{C}}(X, -)$ が $\lambda$-有向余極限を保存することである。 圏 $\mathcal{C}$ が 局所 $\lambda$-可提示 (locally $\lambda$-presentable) であるとは、$\mathcal{C}$ が小余完備であり、$\lambda$-可提示対象からなる小集合 $\mathcal{P}$ が存在して、$\mathcal{C}$ の任意の対象が $\mathcal{P}$ の対象からなる $\lambda$-有向余極限として表されることである。局所可提示圏とは、ある $\lambda$ に対し局所 $\lambda$-可提示となる圏である。

定義 6.2(直交性と局所的対象)

圏 $\mathcal{C}$ における射 $s : A \to B$ と対象 $X \in \mathcal{C}$ に対し、$X$ が $s$ に対して 直交する (orthogonal) とは、引き戻し写像 $$ s^* : \mathrm{Hom}_{\mathcal{C}}(B, X) \xrightarrow{\ \cong\ } \mathrm{Hom}_{\mathcal{C}}(A, X) $$ が全単射となることである。射の集合 $W$ に対し、$W$ のすべての射と直交する対象を $W$-局所的対象 ($W$-local object) と呼び、その充満部分圏を $\mathcal{C}_W$ と表す。

定理 6.3(局所可提示圏の小局所化定理)

$\mathcal{C}$ を局所可提示圏、$W$ を $\mathcal{C}$ の射の小集合とする。このとき、$W$-局所的対象のなす充満部分圏 $\mathcal{C}_W$ は $\mathcal{C}$ の反射的部分圏 (reflective subcategory) である。すなわち、包含関手 $i : \mathcal{C}_W \hookrightarrow \mathcal{C}$ は左随伴関手(局所化関手) $L_W : \mathcal{C} \to \mathcal{C}_W$ を持つ。

定理 6.3 の証明(超限帰納法による局所化関手の構成)

$W$ は小集合であり、各射 $w : A_w \to B_w \in W$ の始域 $A_w$ および終域 $B_w$ は、ある正則基数 $\lambda$ に対して $\lambda$-可提示であるとしてよい($\mathcal{C}$ は局所可提示であるため、十分大きな $\lambda$ をとれる)。

局所化関手 $L_W(X)$ を構成するために、小対象論法(定理 3.4)の類似の超限帰納法を用いる。

  • 基底段階 ($\alpha = 0$): 対象 $X$ に対し $X_0 = X$ とする。
  • 後続段階 ($\alpha \to \alpha + 1$): $X_\alpha$ に対して、すべての $w : A_w \to B_w \in W$ とすべての射 $f : A_w \to X_\alpha$ からなる組 $(w, f)$ を考える。以下の押し出し図式により $X_{\alpha+1}$ を定義する: $$ \begin{array}{ccc} \bigoplus_{(w, f)} A_w & \xrightarrow{\ \bigoplus w\ } & \bigoplus_{(w, f)} B_w \\ \downarrow{\scriptstyle \bigoplus f} & & \downarrow \\ X_\alpha & \longrightarrow & X_{\alpha+1} \end{array} $$ これにより、集合 $W$ のすべての射からの図式に対して、拡張の存在が「1ステップだけ」保証される。ただし、押し出した結果として新たな「満たされない図式」が生じる可能性がある。
  • 極限段階 ($\gamma$ は極限順序数): $X_\gamma = \varinjlim_{\beta < \gamma} X_\beta$ とする。

この超限反復を正則基数 $\lambda$ まで続ける。最終的に $X_\lambda = \varinjlim_{\alpha < \lambda} X_\alpha$ を得る。 各 $A_w, B_w$ が $\lambda$-可提示であるため、任意の射 $A_w \to X_\lambda$ はある段階 $\alpha < \lambda$ での射 $A_w \to X_\alpha$ を経由する。その射は $\alpha+1$ 段階の押し出しにより $B_w \to X_{\alpha+1} \to X_\lambda$ へと拡張される。 この議論と等化子の直交性を確保するためのさらなるステップ(または $W$ にあらかじめ余等化子的な図式を含める工夫)により、$X_\lambda$ に対し写像 $s^*$ が全射のみならず全単射(直交性)となるまで超限構成をさらに反復する(Bousfield 局所化の構成)。結果として得られる極限対象を $L_W(X)$ とすれば、これが反射関手を与える。

$\blacksquare$
例 6.4(アーベル圏の導来圏と Verdier 局所化)

アーベル圏 $\mathcal{A}$ のホモトピー圏 $K(\mathcal{A})$ において、擬同型 (quasi-isomorphisms) のなすクラス $W$ で局所化して導来圏 $D(\mathcal{A}) = K(\mathcal{A})[W^{-1}]$ を構成する操作(Verdier 局所化)は、代数幾何学や表現論の基礎である。この局所化プロセスにおいて、$W$ に属する射の錐 (cone) を非輪状化 (acyclic) 対象として完全複体のクラスを形成する。 これを DG 圏や $\infty$-圏の枠組みで厳密な関手として構成(Bousfield 局所化)する際にも、超限帰納法が決定的な役割を果たす。非輪状にしたい複体のクラスに対して、そのコホモロジーを潰すための cone を追加し、さらにその操作によって新たに生じた非輪状性の破れを修正するために、無限順序数にわたって錐の接着を超限帰納的に反復する。極限順序数で有向余極限をとることで、完全な直交性条件(局所性条件)を満たす対象への再構成(例:単射的分解の一般化である fibrant replacement)が達成されるのである。

7. 凝縮数学における凝縮集合と極端不連結空間上の層への帰着

定義 7.1(極端不連結空間と Gleason の定理)

位相空間 $X$ が 極端不連結 (Extremally Disconnected; ED) であるとは、任意の開集合の閉包が開集合となることである。Gleason の定理により、コンパクト Hausdorff 空間の圏 $\mathrm{CHaus}$ における射影的対象は、極端不連結コンパクト Hausdorff 空間と一致する。任意のコンパクト Hausdorff 空間 $X$ は、ある ED 空間からのエピ射 $P \twoheadrightarrow X$ を持つ。

定義 7.2(凝縮集合と基数カットオフ)

$\mathrm{ProFinite}$ を副有限 (profinite) 空間(または等価に ED 空間の圏の適当な部分圏)の圏とする。 凝縮集合 (Condensed Set) とは、$\mathrm{ProFinite}$ 上の層 $X : \mathrm{ProFinite}^{\mathrm{op}} \to \mathrm{Set}$ のことである。基数問題(宇宙のサイズ問題)を避けるため、Clausen と Scholze は非可算強到達不能基数 $\kappa$ を固定し、$\kappa$-小さな副有限空間のサイト上の層としての $\kappa$-凝縮集合の圏 $\mathrm{Cond}^{(\kappa)}(\mathrm{Set})$ を定義し、最終的に有向余極限(超限極限)を用いて全体の凝縮集合の圏を構成した。

例 7.3(超限帰納法による完全性の修復と極限)

位相線形空間(Fréchet 空間など)の代数的振る舞い(核・余核が元の位相を保持しない等)を解消するために凝縮数学が導入された。位相線形空間から凝縮アーベル群への関手的な埋め込みは極めて強力だが、凝縮群におけるテンソル積や導来圏を構成する際、空間の分解(Čech 神経など)が不可欠となる。 ここで、射影分解を極端不連結空間から構成するとき、Gleason カバーを反復適用する Simplicial resolution を構築する。この際、ホモトピー極限や超限順序数にわたるスペクトル系列の収束性を保証するために、超限帰納法が再び用いられる。特に、解析幾何学における完備化テンソル積など、無限回の手続きで代数的な閉包や完備化を生成する操作は、後続ステップで代数的な商をとり、極限ステップで位相的完備化を施すという操作の超限反復として記述される。凝縮圏は十分な極限と余極限を持つ(局所可提示圏である)ため、この超限構成が正当化され、代数・位相・解析の理論を統一的に扱う強靭な枠組みが提供されるのである。

8. Grothendieck Topos における Giraud の定理

定理 8.1(Giraud の定理)

圏 $\mathcal{E}$ に対し、以下の条件は同値である:

  1. $\mathcal{E}$ はある小サイト $(\mathcal{C}, J)$ 上の層の圏 $\mathrm{Sh}(\mathcal{C}, J)$ と同値である(すなわち $\mathcal{E}$ は Grothendieck topos である)。
  2. $\mathcal{E}$ は以下の Giraud の公理を満たす:
    • (i) 小余完備である(小余極限が存在する)。
    • (ii) 余極限が引き戻し (pullback) に関して普遍的である(universal colimits)。
    • (iii) 同値関係が効果的である(effective equivalence relations)。
    • (iv) 小生成子集合を持つ(ある小集合 $G \subset \mathrm{Ob}(\mathcal{E})$ が存在し、任意の射 $A \to B$ がエピ射であることは、$G$ の対象からの射の像の和となることと同値)。
例 8.2(Giraud の定理における超限構成と小サイトの復元)

Giraud の定理の証明の核心は、公理 (i)-(iv) を満たす抽象的な圏 $\mathcal{E}$ から、いかにして具体的な小圏 $\mathcal{C}$ 上の「層」を復元するかにある。小生成子集合 $G$ を対象とする充満部分圏を $\mathcal{C}$ とし、標準的な Grothendieck 位相(epimorphism sieve に基づく)を入れる。 ここで、$\mathcal{E}$ の任意の対象 $X$ が $\mathcal{C}$ 上の層に他ならないことを示す(関手 $\mathcal{E} \to \mathrm{Sh}(\mathcal{C}, J)$ が同値であることの証明)過程で、対象 $X$ を $G$ の対象の和によって「被覆」し、さらにその「関係(relations)」を解消する。この解消プロセスは前述の SAFT や小対象論法と同様、単一のステップで終わる保証はなく、超限帰納法を用いて記述される。後続順序数ステップでは局所的な同値関係のエピ射による被覆を細分化し、極限順序数ステップで有向余極限(または普遍的余極限による接続)をとる。Giraud公理の「普遍的余極限」と「同値関係の有効性」が、この超限帰納法を用いた構成プロセスが矛盾なく収束し、正しく対象 $X$ を層として完全に復元することを保証しているのである。

9. 参考文献・引用リンク